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判例チェック No.66 最高裁第2小法廷平成27年6月1日判決・不当利得返還請求事件 ≪2015年7月28日投稿≫

判例チェック №66 最高裁第二小法廷平成27年6月1日判決・不当利得返還請求事件(最高裁HP)
★ チェックポイント
異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした債務者が,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができる場合
■ 事案の概要
旧貸金業法43条1項は,債務者が貸金業者に利息として支払ったものが改正前利息制限法1条1項所定の制限を超えていたとしても,(1)任意の支払であり,(2)弁済金の受領時に旧貸金業法18条1項所定の事項を記載した書面が交付されているなどの要件を満たしていれば,有効な利息の債務の弁済とみなすものとしていた。
Xは,平成12年1月14日から平成14年2月27日までの間,貸金業者であるAとの間で継続的な金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)をした。Aは,平成14年2月28日,Yに対し,本件取引の貸金残債権の譲渡(以下「本件債権譲渡」という。)をした。本件取引に旧貸金業法43条1項の適用がないとした場合,Xの弁済金のうち利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分(以下「制限超過部分」という。)は元本に充当され,その結果,同日における貸金残債権の元本の額は33万9579円に減少していた(以下,本件取引に旧貸金業法43条1項の適用がなく,制限超過部分の充当により元本が減少していたことを「本件事由」という。)。
Xは,平成14年3月月21日頃,Yに対し,異議をとどめないで本件債権譲渡の承諾をし,引き続き,平成24年11月19日までの間,Yとの間で継続的な金銭消費貸借取引をした。
本件は,Xが,本件取引には旧貸金業法43条1項の適用がなく,Xは本件事由をもってYに対抗することができるとした上,本件取引及びその後の取引における各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生しているとし,Yに対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還等を求めた。
■ 判旨
「民法468条1項前段は,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができないとするところ,その趣旨は,譲受人の利益を保護し,一般債権取引の安全を保障することにある(最高裁昭和42年(オ)第186号同年10月27日第二小法廷判決・民集21巻8号2161頁参照)。そうすると,譲受人において上記事由の存在を知らなかったとしても,このことに過失がある場合には,譲受人の利益を保護しなければならない必要性は低いというべきである。実質的にみても,同項前段は,債務者の単なる承諾のみによって,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものであり,譲受人が通常の注意を払えば上記事由の存在を知り得たという場合にまで上記効果を生じさせるというのは,両当事者間の均衡を欠くものといわざるを得ない。したがって,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができると解するのが相当である。」
「原審としては,本件取引における18条書面の交付の有無や,仮に交付がなかった場合にこれをYにおいて知り得たか否かなどについて審理判断をすべきことになるところ,原審は,これらの点について審理判断することなく,単に弁論の全趣旨から旧貸金業法43条1項の適用がなかったと判断した上,Yには重大な過失がないなどとして,Xは本件事由をもってYに対抗することができない旨即断したものである。」「原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。」
★コメント
本判例は,債務者が異議をとどめない承諾をしても,譲受人に過失がある場合には,債務者が有する抗弁は切断されない旨,初めて明示したことに意義がある。
なお,最高裁は,悪意の譲受人に関しては,異議をとどめない承諾による抗弁喪失の効果が「債権譲渡人の利益を保護し一般債権取引の安全を保障するため法律が付与した法律上の効果と解すべきであって,悪意の譲受人に対してはこのような保護を与えることを要しない」と判示していた(最高裁昭和42年10月27日判決・民集21巻8号2161頁)。
学説においては,異議をとどめない承諾による抗弁喪失の効果を与える譲受人に対し,悪意に留まらず,無過失まで要するかについては,見解が分かれていたが,異議をとどめられなかったという外観への信頼を保護するという趣旨などを根拠に,無過失を要するとの見解が有力であった(内田貴『民法3 第2版』236頁参照)。
因みに,現在国会上程中の債権法改正法案では異議をとどめない承諾の制度を廃止することとし,現行民法468条1項を削除し,債務者がことさら異議を唱えなくとも単なる承諾をもってしては,抗弁が切断しないことを明らかにしている(金融法務事情2021号4頁)。