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判例チェックNo.67 最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁[ピンク・レディー]ほか ≪2015年8月4日投稿≫

【題材】
判例① 最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁[ピンク・レディー]
判例② 東京地判平成25年4月26日判例時報2195号45頁[嵐]

 

【チェックポイント】
□パブリシティ権の権利構成
□パブリシティ権侵害の判断基準
□パブリシティ権侵害による差止めの可否
□パブリシティ権侵害による差止めを認めた具体的事例

 

【判例①の内容】
■事案の概要
女性デュオ「ピンク・レディー」として活動していたXら(原告,控訴人,上告人)が,Xらを被写体とする14枚の写真(以下「本件各写真」という。)を自ら発行した週刊誌「女性自身」(以下「本件雑誌」という。)に無断で掲載したY(被告,被控訴人,被上告人)に対し,Xらの肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利が侵害されたと主張して不法行為に基づく損害賠償を求めた。なお,本件各写真は,かつてXらの承諾を得てY側のカメラマンにより撮影されたものであるが,Xらはそれらが本件雑誌に掲載されることについて承諾していなかった。
第一審判決及び控訴審判決がともにXらの請求を棄却したので,Xらが上告した。

 

■判旨(上告棄却)
「人の氏名,肖像等(以下,併せて「肖像等」という。)は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される……。そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると,肖像等を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。」
本件各写真については,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎないこと,いずれも白黒写真であったこと,その大きさも,縦2.8cm,横3.6cmないし縦8cm,横10cm程度のものであったことを指摘したうえ,「読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたもの」とし,Yの行為が「専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえ(ない)」と結論づけた。

 

【判例②の内容】
■事案の概要
男性アイドルグループ「嵐」及び「KAT-TUN」として活動しているXらが,Xらを被写体とする多数の写真(以下「本件各写真」という。)を自ら発行した12冊の書籍(以下「本件各書籍」という。)に無断で掲載したYに対し,Xらの肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利及びみだりに自己の容貌等を撮影されず,また,自己の容貌を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益が侵害されたと主張し,不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに,上記侵害のいずれかに基づく書籍の出版及び販売の差止め並びにその廃棄を求めた。なお,Xらは,Y側のカメラマンが本件各写真を撮影したり,Yが本件各写真を本件各書籍に掲載したりすることを承諾していなかった。

 

■判旨(一部認容)
・パブリシティ権侵害の有無
判例①を引用したうえ,本件各書籍の各ページの内容を細かく検討し,Yが本件各書籍に本件各写真を掲載した行為はいずれも判例①の第1類型に該当するとして,パブリシティ権侵害を認めた。以下,「嵐 ARASHI お宝フォトBOOK BIG WAVE」(本件書籍6)についての判断部分の一部を引用する。
「……本件書籍6は,表紙のほか,全128頁のうち119頁にわたり,上記原告らを被写体とする写真242枚(そのうち227枚がカラー写真である。)を掲載したものであり,しかも,その大部分は,写真だけか,写真の脇に短い記述を添えただけのものである。そして,各章……の冒頭には見出しとともに前文があるが,いずれの前文も,……導入としての意義があるにとどまり,これを超えて,独立した意義があるということはできない。また,……の各章には二つずつのコラムに比較的まとまった文章があり,……の章には15頁にわたる嵐の活躍などを記述する文章があるが,その具体的な内容と掲載された写真との間に格別の関連はないから,掲載された写真が,上記コラムや記事の内容を補足するものということはできず,かえって,本件各写真の枚数やその取り扱われ方等に照らすと,上記コラムや記事は,本件各写真の添え物であって独立した意義があるとは認められない。」
・パブリシティ権侵害による差止め(及び廃棄)の可否
「弁論の全趣旨によれば,被告は,本件各書籍の販売を継続していることが認められ,また,被告は,本件各書籍を出版,販売することが原告らのパブリシティ権を侵害するものではないと主張しているから,これらの事情によれば,被告は,今後,本件各書籍を出版してこれを販売し,又は占有する本件各書籍を販売するおそれがある。
そして,パブリシティ権が人格権に由来する権利の一内容を構成するものある〔ママ〕ことに鑑みれば,原告らは,被告に対し,原告らのパブリシティ権の侵害の停止又は予防のために,本件各書籍の出版及び販売の差止め並びに被告が占有する本件各書籍の廃棄を求めることができるというべきである。」

 

【コメント】
判例①は,パブリシティ権を最高裁として初めて承認したものである。
パブリシティ権の権利構成につき,学説及び裁判例はパブリシティ権を人格権とは別個独立の財産権と理解する説(財産権説)から出発し,近時の学説及び裁判例はこれを人格権との関連で理解する説(人格権説)に立っていたところ,判例①はパブリシティ権を「人格権に由来する権利」の一内容であると構成した。この構成につき,人格権それ自体と構成するものと読むこともできるが,パブリシティ権は肖像等の商業的価値を保護するものであり,また,「由来する」という幅のある表現が用いられていることから ,人格権そのものではなく,それに由来する財産権と構成するものと読むのが自然である 。
つづいて,パブリシティ権侵害の判断基準につき,東京高判平成11年2月24日判例集未搭載[キング・クリムゾン:控訴審]以降の裁判例において,使用目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察し,専ら他人の肖像等の顧客吸引力の利用を目的とするといえるか否かという比較衡量型の基準(「専ら」基準)が基本的に採用されていたところ ,判例①も同様の基準を採用した。もっとも,判例①は,併せてパブリシティ権侵害が肯定される3類型を明示してパブリシティ権侵害の成立範囲を限定しており,従来の「専ら」基準とも異なる 。最後に「など」が付されていることから,3類型はあくまで例示であるが,表現の自由等との関係上,3類型の各要件は厳格に解釈されると考えられる 。
さいごに,パブリシティ権侵害による差止めの可否につき,判例①は損害賠償請求事件ゆえに言及していないが,パブリシティ権が「排他的に利用する権利」である以上,差止めも可能であると考えられる 。ここで,判例②は,判例①に従ってパブリシティ権に基づく差止請求を認容した実例として意義がある。