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判例チェックNo.72 最高裁第1小法廷平成28年4月28日判決・平成27年(受)第330号債務不存在確認等請求本訴、不当利得返還請求反訴事件 (出典 最高裁HP) ≪2016年6月9日投稿≫

 

★チェックポイント
破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産財団に属するか(積極)

 

■事案の概要
A,Y1夫婦の長男Bは、生前自己を被保険者とする生命保険、生命共済に加入していた。その死亡保険金受取人はY1に指定されており、死亡共済金の受取人はA,Y1であった。
A,Y1は、平成24年3月に破産申立てをし、X1とX2が破産管財人に選任された。
同年4月、Bが死亡し、同年5月、Y1は保険金、共済金合計2400万円を受領し、そのうち1400万円をX1に送金したが、残金1000万円は自己の用途に費消した。
Y1は、そのうち800万円については、その委任した弁護士であるY2の助言に基づいて費消したものである。
X1,X2は、B死亡による共済金及び保険金の各請求権は、Y1またはAの各破産財団に属するにもかかわらず、Y1が保険金・共済金を受領・費消したことは法律上の原因なくして利得するものであるとして不当利得返還請求権に基づき、またY2にはY1の800万円の費消につき弁護士としての注意義務違反があるとして不法行為による損害賠償請求権に基づき、その支払いを求めた。
一方Y1はX2に対する反訴として、自ら送金した1400万円はY1の破産財団に属しないのにX1が不当に利得しているとして、その支払を求めた。
原審は、B死亡による保険金、共済金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するとしてXらの各請求を認め、Y1の反訴請求を認めなかった。
そこでY1,Y2が上告したのが本件である。

 

■判旨
第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立により,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得するものと解されるところ(最高裁昭和36年(オ)第1028 号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照),この請求権は, 被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって,破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。
前記事実関係によれば,本件生命共済契約及び本件生命保険契約はいずれも本件各開始決定前に成立し,本件生命共済契約に係る死亡共済金受取人は上告人Y1及びAであり,本件生命保険契約に係る死亡保険金受取人は上告人Y1であったから,本件保険金等請求権のうち死亡共済金に係るものは本件各破産財団に各2分の1の割合で属し,本件保険金等請求権のうち死亡保険金に係るものは上告人Y1の破産財団に属するといえる。

 

★コメント
停止条件付あるいは始期付権利は、条件成就や期限の到来が宣告後であっても、その原因となる法律行為が宣告前になされていれば、破産財団となる。本判決はこの理を死亡保険金、死亡共済金について明らかにしたものである。なお上告論旨は最高裁平成3年(オ)第625号同7年4月27日第一小法廷判決・生命保険判例集8巻123頁を援用したようであるが、この判例は本件に適切でないとして簡単に排斥されている。