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判例チェックNo.76 最高裁大法廷平成28年12月19日決定・平成27年(許)第11号遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 (出典 最高裁HP)≪2017年1月4日投稿≫

★チェックポイント
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるか。(積極)

 

■事案の概要
被相続人Aの法定相続人は,許可抗告人とその相手方だけであり,遺産として普通預金,外貨普通預金,通常貯金,定期貯金(以下「本件預貯金」という。)のほかに不動産があった。許可抗告人と相手方間には,本件預貯金につき遺産分割の対象に含める合意はなされていない。
原審は,本件預貯金は相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し,相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないとの前提に立ち,遺産分割審判に対する抗告を棄却したので,許可抗告申立てがなされた。

 

■判旨
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

 

★コメント
周知のとおり,金銭債権は可分債権であり,遺産中の金銭債権も民法427条の分割債権の規定の適用を受けるから,共同相続人は各自が当然相続分の割合に応じ債権を行使できるとの見解も見られ,これに対し,銀行等金融機関は,共同相続人の一部に対する預貯金払い戻しにより他の相続人との紛争に巻き込まれることを懼れてか,これを拒絶していた。家裁実務では,分割債権説,不可分債権説,合有的債権説があり,混乱していた。
本判例は,相続財産である普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は当然に分割されず,その行使について,遺産分割手続を経由しなければならないとするものであり,従来の学説判例及び実務の混乱を統一するものである。
本判例により預金債権は相続開始とともに凍結されることになるから,預金者は,共同相続人が被相続人死亡の際の緊急な支出に難渋すると予想するならば,予め,相続財産となるべき預貯金を特定の相続人に相続させる旨の公正証書遺言を作成しておくのが法的手段としては最も有効であろう。