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判例チェックNo.77 最高裁第3小法廷平成29年1月31日判決・平成28(受)1255号養子縁組無効確認請求事件(出典 最高裁HP)≪2017年2月9日投稿≫

★ チェックポイント
養子縁組が相続税の節税を動機としているというだけで、無効となるか(消極)

 

●判決要旨
専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

 

■事案の内容
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人X1は亡Aの長女であり,被上告人X2はAの二女である。
上告人は,平成23年▲月,Aの長男であるBとその妻であるCとの間の長男として出生した。
Aは,平成24年3月に妻と死別した。
(2) Aは,平成24年4月,B,C及び上告人と共にAの自宅を訪れた税理士等から,上告人をAの養子とした場合に遺産に係る基礎控除額が増えることなどによる相続税の節税効果がある旨の説明を受けた。
(3) その後,養子となる上告人の親権者としてB及びCが,養親となる者としてAが,証人としてAの弟夫婦が,それぞれ署名押印して,養子縁組届に係る届書が作成され,平成24年▲月▲日,世田谷区長に提出された。
2 被上告人らは,上告人に対して,本件養子縁組は縁組をする意思を欠くものであると主張して,その無効確認を求めた。
3 原審は、本件養子縁組は、専ら相続税節税のためになされたものであって、民法802条1号の「当事者間に縁組みをする意思がないとき」に当たるとして,無効と判断した。
4 本判決要旨は、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」というものである。

 

★コメント
民法802条1号については、旧民法時代の判例ではあるが、「当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合」を指すとする判例(最高裁昭和23年12月23日第1小法廷判決・民集2巻14号493頁)があり、また、相続税の軽減のみを目的とする縁組は縁組意思を欠くものとして無効と解すべきであろうとする学説(阿部徹「新版注釈民法(24)337頁」及び同書で引用されている学説)がある。
本判決要旨冒頭の「専ら」とは「主として」の意味であることは、本判決要旨の理由説明中に、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存しうるものである。」とあるところから明らかであり、反対に上記事案の内容3で記載した原判決の「専ら」は「そのことだけ」という意味であることは明らかであるが、この点を注意して本判例を読まねばならない。
本判決は、原判決と同じ前提事実から、真に養親子関係の設定を欲する効果意思の存在につき正反対の結論に達している。その原因はそれぞれがその判断に用いた経験則の相違による。判文及び本判決と原判決の事件番号によれば、養親は税理士から養子縁組の節税効果につき説明を受けた時既に高齢であり、その後数年で死亡し、養子は養子縁組当時年齢1、2年位であろうから、原審裁判所の採用した経験則も理由があるかに見える。これに対し、本判例は、家裁の未成年養子許可審判の実情を反映しているかに見える。通常ならば経験則適用の差で結論が正反対になるならば、更に審理を尽くすべく原審差し戻しもあろうが、本判決は原判決破棄自判(被上告人らの控訴棄却)である。
本判決は事情判決であろうが、今後類似事案が多数予想され課税実務にも影響するであろうから、本件についても事案の内容がより詳細に明らかにされることが望まれる。

以上