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コロナ問題 Legal Advice

Q&A 新型コロナウイルス感染症に関する法的問題【休業関連】
2020-05-21
Q&A 新型コロナウイルス感染症に関する法的問題【休業関連】
Q 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け,会社の売上が激減しました。やむなく営業を停止して,従業員を自宅待機にしようと思いますが,従業員に休業手当を支払う必要がありますか。
 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言による休業要請があった場合はどうでしょうか。
 
 
A 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響があることのみをもって,休業手当の支払いが不要ということにはなりません。経営者が通常なすべきあらゆる手段をとったとしても従業員を自宅待機にせざるを得ないような場合でもない限り,休業手当の支払いは必要であると考えられます。
 また,新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言による休業要請があった場合でも,直ちに休業手当の支払いが不要であるとはいえません。たしかに,休業要請があった場合には,それがない場合と比べて休業手当の支給が不要といえる可能性は高くなります。しかし,休業要請は,「要請」にすぎず「命令」ではありませんので,強制力がありません。したがって,休業要請の対象業種であっても,休業手当の支給が不要か否かは,営業停止がやむを得ないと言えるのかなどについて個別に検討・判断する必要があります。
 なお,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が売上減少に及ぼした影響が乏しいにもかかわらず,従業員を自宅待機にした場合など,休業について経営者に帰責性(過失)がある場合には,賃金全額を支払う必要が生じる場合もありますので,注意が必要です。
 休業手当を支払った事業者については,条件を満たせば,雇用調整助成金の特例により,助成金の支給を受けることができる場合がありますので,ご確認下さい。
 
<解説>
 労働基準法は,「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」とし,いわゆる「休業手当」を支払うべき場合について定めています(同法26条)。
 ご質問を検討するにあたっては,営業を停止して,従業員を自宅待機にしたことが「使用者の責に帰すべき事由」に当たり,休業手当の支払いを要する場合と言えるか否かを判断する必要があります。
 この点,休業手当は労働者の最低生活を保障するための手当であるとの見地から,「使用者の責に帰すべき事由」とは,使用者の故意,過失または信義則上これと同視すべき事由よりも広く,民法上は使用者の帰責事由とならない経営上の障害も,天災事変などの不可抗力に該当しない限りはそれに含まれると解されています(菅野和夫『労働法』(弘文堂,2019)456ページ参照)。そして,「使用者の責に帰すべき事由」にあたらない不可抗力に該当するためには,①その原因が事業の外部により発生し(外部起因性),かつ,②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない場合(防止不可能性)であることが必要であると一般的に解されており,経営上の障害による休業の場合には,「使用者の責めに帰すべき事由」による休業にあたらない不可抗力に該当すると認められる例は極めて少ないとされています。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて会社の売上が激減したとしても,その原因は感染症の感染拡大のみではなく,その多くは資材不足や客の減少などの経営上の理由によるものであると思われます。そのため,休業要請のない状況において使用者の自主的判断によりなされた従業員に対する自宅待機命令は,上記①及び②の要件を満たさないことが多いといえます。したがって,このようなケースでは,休業手当の支給が必要となる可能性が高いと考えられますので,休業手当の支給をしないこととする場合には,極めて慎重に検討・判断する必要があります。
 では,新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言による休業要請があった業種において従業員を自宅待機させる場合はどうでしょうか。この場合は,たしかに,要請に反して営業を継続した場合における影響(行政による公表がされ,それが報道機関によって報道されると,企業の信用が低下する可能性があります)に鑑みますと,営業継続が事実上困難であることも多いと思われます。そのため,上記①及び②の要件を満たして休業手当の支給が不要といえる可能性は,休業要請がない場合と比べると高くなると考えられます。しかし,休業要請は,「要請」にすぎず「命令」ではありません。つまり,強制力がありません。したがって,休業要請の対象業種であったとしても,上記①及び②の要件を満たし,休業手当の支給が不要といえるか否かを,慎重に検討・判断する必要があります。
 なお,民法は,「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができない。」と定めています(同法536条2項)。すなわち,営業を停止が,同条項に規定する「責めに帰すべき事由」に該当する場合には,使用者は労働者に対して,休業手当(平均賃金の60%以上)を支給するだけでは足りず,賃金を全額支払わなければなりません。例えば,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が売上減少に及ぼした影響が乏しいにもかかわらず従業員を自宅待機にした場合など,営業停止に帰責性がある(過失がある)場合には,賃金全額を支払う必要が生じる場合もあります。
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