本文へ移動

コロナ問題 Legal Advice

Q&A 新型コロナウイルス感染症に関する法的問題【不可抗力関連】
2020-05-21
Q&A 新型コロナウイルス感染症に関する法的問題【不可抗力関連】
Q 新型コロナウイルス感染症が原因で契約の義務が履行できない場合でも,債務不履行に基づき,損害賠償責任を負うことはありますか。例えば,新型コロナウイルス感染症の国際的蔓延を原因として,海外から一部の部品を調達できなくなり,完成品の引渡しが納期までに間に合わない場合が想定されます。
 
 
A 新型コロナウイルス感染症の影響があったからと言って損害賠償責任を負わないと拙速に判断してはなりません。ご質問の事例につきましても,契約の締結経緯等から当該部品が海外から調達できない場合にも備えて対策を講じておくべきであったのかなど,詳細に事情を確認したうえで,慎重に判断する必要があります。
 
<解説>
 民法上,「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし,その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りではない。」と定められています(民法415条)。
 ご質問を検討するにあたっては,新型コロナウイルス感染症という原因が「債務者の責めに帰することができない事由」(以下「債務者帰責事由」といいます。)と言えるか否か,判断する必要があります。
 ただし,債務者帰責事由の有無については,同条但書記載のとおり,契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断することになりますが,具体的には,問題となった債務に係る給付の内容や不履行の態様から一律に定まるのではなく,個々の取引関係に即して,契約の性質,契約の目的,契約の締結に至る経緯等の債務の発生原因となった契約に関する諸事情を考慮し,併せて取引に関して形成された社会通念をも勘案して判断しなければなりません(筒井健夫ほか『一問一答 民法(債権関係)改正』(商事法務,2018)74頁参照)。
 したがって,新型コロナウイルス感染症が原因と言っても,事案によって契約の性質・目的・締結経緯等も様々ですので,一律に答えを導き出すことはできません。ご質問の事例につきましても,契約の締結経緯等から当該部品が海外から調達できない場合にも備えて対策(例えば国内生産に切り替えるなど)を講じておくべきであったのかなど,詳細に事情を確認したうえで,慎重に判断する必要があります。新型コロナウイルス感染症の影響があったからと言って損害賠償責任を負わないと拙速に判断してはなりません(債務者に債務者帰責事由が存しないことの立証責任(真偽不明の場合に不利益となる地位)があることにも留意しておく必要があります。)。
なお,債務者帰責事由の不存在と同様,債務者の免責事由として論じられる概念として「不可抗力」があります。「不可抗力」については,元来,人の力による支配・統制を観念することのできない自然現象や社会現象が考えられており(潮見佳男『新債権総論Ⅰ』(信山社,2017)383頁),「債務者帰責事由の不存在」よりも狭い概念として使われています。すなわち,「不可抗力」は,債務者の行為可能性(したがって,合理人の注意義務)を前提としない結果実現保証を前提としつつも,およそ人の統御不可能な事由が契約で引き受けられたリスクの外にあること(したがって,「契約は守らなければならない」との原則の対象外であること)を根拠に,結果不実現を理由とする損害賠償責任から債務者を解放する事由として意義を有する旨指摘されています(同潮見385頁)。
 因みに,債務の履行が「不能」か否かについても,契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断されることになりますが(民法412条の2),債務者の受ける利益に比して債務の履行に過大の費用を要する場合にも,「不能」と該当し得るものと考えられます。
TOPへ戻る