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判例

判例チェック No.6 東京高裁平成14年12月5日判決 損害賠償請求控訴事件

カテゴリ:判例
判例チェック No.6 
東京高裁平成14年12月5日判決 損害賠償請求控訴事件
 
(判例時報1814号82頁)
★チェックポイント
連鎖販売取引の販売システムにより化粧品を販売する会社が,その傘下の販売会社との販売業務委託契約を解除して取引を拒絶したことが,独占禁止法19条あるいはその趣旨に反し,著しく信義則に反するものであって,不法行為を構成するとされた事例
■事案の概要
被控訴人Yの製造,販売にかかる化粧品の販売会社(販社)であったXが,Yと締結した販社販売業務委託契約(本件委託契約)を平成9年6月に解除されたことについて,それが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条で禁止されている不公正な取引方法(不当な取引拒絶)であり,不法行為に当たるとして,解除によって被った逸失利益及び弁護士費用の支払いを求めたもの。
Yの販売システムは化粧品の連鎖販売取引であり,売上に応じて二次代理店から一次代理店へ,一次代理店から販社へと昇格し,それに伴って手数料率・参加の代理店数が増加し,販売利益が急激に上昇していくというもので,その他にも売上に応じた特典,報償が設けられていた。
Yは,Xが深刻な経営危機に陥っていたにもかかわらず,その在庫解消策等,根本的な経営改善策を取ることもなく,Xの返品要求にも応じず,やむなくXが内容証明郵便で返品を申し入れるや,Xが他社化粧品の取扱いを検討していたことを利用し,その報復的措置として本件委託契約違反の証拠を収集して本件解除に及び,以後,Xとの取引を拒絶した。その結果,Xが長年培ってきた販売網は崩壊するに至った。
■判旨
 (Yの一連の対応は)前記のような販売システムを構築し,それに基づく販売網を有するYにおいて,その相手方であるXがY以外に容易に取引先を見出し得ないような事情の下に,取引の相手方の事業活動を困難に陥れる以外に格別の理由がなく,取引を拒絶したものというべきであり,独占禁止法19条,公正委員会告示第15号(一般指定)2項の不当な取引拒絶に該当するおそれがあり,独占禁止法19条の不公正な取引方法に該当する可能性が高い。また,同法条に該当しないとしても,その趣旨に反する行為であることは明らかである。……本件解除は,独占禁止法19条あるいはその趣旨に違反するものであること,そして……一連の経緯からして,著しく信義則に反するものであることなどからすれば,本件解除を理由として,YがXとの本件委託契約に基づく取引を拒絶したのは,違法にXの同契約上の受託者としての地位を侵害するものであり,不法行為に当たるというべきである。
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