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判例

判例チェック No.7 東京地裁平成20年11月18日判決・損害賠償等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック No.7 
東京地裁平成20年11月18日判決・損害賠償等請求事件
 
(判例集未登載)
★チェックポイント
退職した従業員に対する2年間の競業差止請求が認められるか(積極)。
■事案の概要 
原告に雇用されていた被告が,在職中及び退職時に締結した機密保持契約に基づく競業避止義務に違反したとして,損害賠償及び遅延損害金の支払並びに同義務に違反する行為の差止めを求めた。
原告は,インテリアリペア・デントリペア・エクステリアリペアの3業種につき,「TOTAL REPAIR」事業として導入し,被告は,この3業種の技術習得のために米国研修(渡米4回)及び国内における事業立上げの準備に従事した。被告は,原告パートナーサポート事業部に所属し,インストラクターの地位にあって,加盟店への技術指導及び車関連事業の直営施工を担当した。
被告は,原告に対し,退職時,機密保持の確認・競業避止義務の確認・損害賠償の約定(いずれも退職後も含む)を記載した機密保持誓約書に署名押印してこれを提出した。
■ 判 旨
「・・・形式的に競業禁止特約を結んだからといって,当然にその文言どおりの効力が認められるものではない。競業禁止によって守られる利益の性質や特約を締結した従業員の地位,代償措置の有無等を考慮し,禁止行為の範囲や禁止期間が適切に限定されているかを考慮した上で,競業避止義務が認められるか否かが決せされるというべきである。」「原告の技術は,営業秘密に準じるものとしての保護を受けられるので,競業禁止によって守られる利益は要保護性の高いものである。そして,被告の従業員としての地位も,インストラクターとしての秘密の内容を十分に知っており,かつ,原告が多額の営業費用や多くの手間を要して上記技術を取得させたもので,秘密を守るべき高度の義務を負うものとすることが衡平に適うといえる。また,代償措置としては,・・・独立支援制度としてフランチャイジーとなる途があること,被告が営業していることを発見した後,原告の担当者が,被告に対し,フランチャイジーの待遇については,相談に応じ通常よりもかなり好条件とする趣旨を述べたこと,が認められ,必ずしも代償措置として不十分とはいえない。そうすると,競業を禁止する地域や期間を限定するまでもなく,被告は,原告に対し競業避止義務を負うものというべきである。」「上記競業禁止特約の効力は認められるので,損害賠償の予定の特約の効力も格別問題を生じないといえる。・・・上記同特約によれば,違約金として,フランチャイズシステムの開業資金合計に相当する金員と,そのシステム等を導入するために要した費用を支払うべきものとされており,・・・その合計額は540万円と認められる。・・・原告は上記技術を独占できるわけではないことから,このうち7割を原告の損害と認める。上記は一種の損害賠償の予定であるが,在職中の労働者を足止めしようとするものではないから,労基法11条違反の問題は生じないといえる。」「上記競業禁止特約の効力が認められる以上,原告の差止請求には理由がある。しかし,その範囲は,技術の陳腐化や原告が上記技術を独占できるわけではないこと等を考慮すると,本判決確定後2年間に限られるべきである。」
●コメント
多くの会社において,退職時に競業禁止の合意を行う会社は多いが,現実に退職後の競業差止めが認められた事例は少ない。その意味で,本判決は,判決確定から2年間競業を禁止した点で注目に値する。また,本判決は,フランチャイズ事業に係る競業差止事例であるが,競業禁止特約の有効性につき,代償措置の有無等を具体的に検討しており,フランチャイズ事業を営まない会社においても参考となる。
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