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判例

判例チェック No.11 最高裁H8.11.26第三小法廷判決 持分権確認・所有権移転登記請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック No.11 
最高裁H8.11.26第三小法廷判決 持分権確認・所有権移転登記請求事件
 
(最高裁判例解説民事篇・平成8年度(下)983頁)
★チェックポイント
相続人のうちの一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定にあたり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することができるか。
■判旨
被相続人が相続開始時に債務を有していた場合における遺留分の侵害額は,被相続人が相続開始時に有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え,その中から債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し,それに法定の遺留分の割合を乗じるなどして算定した遺留分の額から,遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し,同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定するものである。
■事案
被相続人Aは,すべての財産を子Yに遺贈する旨の公正証書遺言を残して死亡した。Aの相続人はYのほか配偶者X1,子X2,X3,養子Bの5名であり,X1,X2,X2は遺留分減殺の意思表示をした。遺産を構成する複数の不動産の一部につき,相続を原因としてYに対して所有権移転登記手続等がなされ,YはX1らから遺留分減殺の意思表示を受けた後,遺産たる不動産の一部を第三者に売却し,その旨の所有権移転登記手続をした。また,相続債務全部を単独で弁済した。
■コメント
遺留分侵害額の算定は,相続人間の内部的な法律関係を前提に,最終的に遺留分権利者の手元に残すべき数額を求めるものである。そして,財産全部を相続人の一人に相続させる旨の遺言がされた場合,相続人間の内部関係では遺留分権利者は債務を履行すべき負担部分はゼロであるから,このことを前提に遺留分侵害額を算定すべきである。
他方,相続分の指定は,共同相続人間の内部関係では効力を生じるが,債権者に対して主張することはできない(多数説)。従って,債権者から請求された場合は,共同相続人は法定相続分の割合に応じてこれを履行したうえ,相続財産全部を取得した相続人に対して求償する関係が残ることになる。
本判例は後掲判例№12と一見矛盾するように見えるが,本判例の事案では求償権が具体化しているのに対し,判例№12の事案では求償権が未だ具体化していない点で前提が異なる。
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