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判例

判例チェック No.12 最高裁H21.3.24第三小法廷判決 持分権移転登記手続請求事件 

カテゴリ:判例
判例チェック No.12 
最高裁H21.3.24第三小法廷判決 持分権移転登記手続請求事件 
 
(判例時報2041号45頁)
★チェックポイント
相続人のうちの一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定にあたり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することができるか。
■判旨
相続人のうちの一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,……特段の事情がない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,……遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。
■事案
被相続人Aは,相続開始時点で本件不動産を含む積極財産として4億3231万円余,消極財産として4億2483万円余の財産を有していた。法定相続人はAの子X,Yの2人であるが,Aは財産全部をYに相続させる旨の公正証書遺言を残して死亡し,Yが遺産全部を承継し,本件不動産の所有権移転登記を経た。そこで,Xは遺留分減殺請求権を行使し,Yに対し本件不動産の共有持分の移転登記を求めた。
遺留分の侵害額の算定に当たり,被相続人が負っていた金銭債務の法定相続分に相当する額を遺留分権利者が負担すべき相続債務の額として遺留分の額に加算すべきかどうかが争点となり,Xは,Aの消極財産のうち可分債務については法定相続分に応じて当然に分割され,その2分の1をXが負担することになるから,Xの遺留分の侵害額の算定においては,積極財産から消極財産を差し引いた748万円余の4分の1である187万円余に,相続債務の2分の1に相当する2億1241万円余を加算しなければならず,侵害額は2億1428万円余となると主張し,Yは,遺言によりYが相続債務をすべて負担することになるから,遺留分の侵害額の算定において遺留分の額に相続債務の額を加算することは許されず,右侵害額は187万円余になると主張した。
■コメント
本事案は判例№11の事案と異なり,相続債務は弁済されておらず,求償権は未だ具体化していない。結論は異論のないところであろう。
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