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判例

判例チェック No.1 京都地裁平成20年9月24日判決・株主総会決議取消等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック№1 
京都地裁平成20年9月24日判決・株主総会決議取消等請求事件
 
(判例時報2020号155頁)
★チェックポイント
取締役の選任決議の定足数を定める定款の規定は,解任決議にも適用されるか(消極)。
■裁判例の概要
(事案の概要) 
Y株式会社は,会社法施行前から,定款18条に「法令又は定款に特別の定めある場合を除き出席株主の議決権の過半数を以て決する。」と定め,会社法施行以後も定款を改正していなかった。そして,平成20年4月10日開催の臨時株主総会において取締役Xを解任する決議を行ったが,出席株主の保有株式総数は総株主の議決権数の過半数に達していなかった。そこで,取締役Xが同株主総会決議取消等請求の訴えを提起した。
(結論)
裁判所は,株主総会決議取消を認めた。
●コメント
 裁判所は,「取締役の選任決議の定足数の定款の定めが解任決議に適用又は準用される」とのY株式会社の主張を排斥したものであるが,取締役の地位及び定款の重要性(明確性)からすれば,判決の結論自体は至極当然である。
 判決文から察するに,このような法律に反する決議がなされ自明のことが問題とされるに至ったのは,同社の定款22条には,取締役の選任は「発行済み株式総数の3分の1以上にあたる株式を有する株主が出席しその議決権の過半数を以て決する」との定めがあることと,旧商法が取締役選任は通常決議事項であるに対し取締役解任は出席株主の3分の2以上の特別決議事項としていたのに,会社法341条では取締役選任と解任の決議要件を同列に規定していることから,定款18条の「法令又は定款に別段の定めある場合」につき,「法令」(会社法)の定めが取締役選任決議と解任決議を同視するものであり,一方「定款」の解任決議要件を選任決議要件と同じ程度に引き下げるものであると誤って解釈したからではないかと思われる。
 会社法の規定を読む場合,制度の変更点を自己の都合のよいように誤って解釈することのないよう,注意を要する。
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