本文へ移動

判例

判例チェック No.13 東京地裁平成11年9月3日判決 離婚請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック No.13 
東京地裁平成11年9月3日判決 離婚請求事件
 
(判例タイムズ1014号239頁)
★チェックポイント
債務の財産分与が認められるか。
■事案の背景
原告(夫)と被告(妻)は婚姻後25年・別居後数年を経た共稼ぎ夫婦で,本件離婚訴訟で婚姻関係の破綻自体は争わず,互いに清算的財産分与として金員の支払を請求し合った。清算対象となる財産中には2000万円弱の借入金残債務があるが,この借入金は,マンション(原告持分10分の7,被告持分10分の3)のほか,某リゾートホテルの303号室,608号室とゴルフ会員権2口の購入資金に充てられたものである。
■判旨
債務についても夫婦共同生活の中で生じたものについては,財産分与に当たりその債務発生に対する寄与の程度(受けた利益の程度)に応じてこれを負担させることができるというべきであり,その負担割合については,財産形成に対する寄与の場合と同様,特段の事情のない限り,平等と解すべきである。
■コメント
従前,債務の財産分与については,原則として分与の対象とならないとされ,住宅ローン等の共同財産の形成に伴う債務は,清算に当たり共同財産から控除して具体的な清算対象額を算出していた。しかし,この方法によると,結果的に,共同財産から控除された債務は,夫婦が平等に負担したのと同じ結果になってしまう。本判決は,債務についても夫婦共同生活の中で生じたものについては財産分与の対象になるとし,積極財産の財産分与の場合に準じ,「その債務発生に対する寄与の程度(受けた利益の程度)に応じてこれを負担させることができる」とした。
■判決の問題点
日常家事債務(不真正連帯債務)を除き,夫婦の一方の名義の債務は,名義人が債務を負うが,離婚当事者に債務の分与を命じた場合は,判決によって分割債務の負担という形成的効果を発生させ得るかとの問題が残る(本件判決は名義人に分与を命じているが,他に,当事者双方に命じる場合,名義人でない当事者に命じる場合が考えられる。)。
弁護士法人
肥後橋法律事務所
 
〒550-0001
大阪市西区土佐堀1丁目3番7号 
肥後橋シミズビル10階
  TEL 06-6441-0645
  FAX 06-6441-0622
TOPへ戻る