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判例

判例チェック NO.23 最高裁平成22年10月14日一小法廷判決

カテゴリ:判例
判例チェック №23
最高裁平成22年10月14日一小法廷判決(判例時報2097号34頁)

★チェックポイント
数社間で順次発注された工事の最終の受注者X(上告人)と発注者Y(被上告人)の間の「Yが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う」旨の合意は,請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨の合意か,或いは支払を受けたとき又はその見込みがなくなったときに支払期限が到来する旨の合意か。
■事案
Aは,指名競争入札で一部事務組合某から浄水場内の監視設備工事を請け負い,このうち監視設備機器(本件機器)の製造等については,AからB,C,D,Y(被上告人),X(上告人)へと順次発注された。Xは本件機器を完成させてAに引き渡し,請負代金はA→B→Cと順次支払われたところでCが破産手続開始決定を受けた。XとYとは,請負契約の締結に際し,支払条件欄中の支払基準欄に「入金リンクとする」との記載がある注文書と請書を取り交わし,Yが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨合意していた。
■判旨
XとYとが,本件請負契約の締結に際して,本件入金リンク条項のある注文書と請書を取り交わし,Yが本件機器の製造等に係る請負代金の支払を受けた後にXに本件代金を支払う旨を合意したとしても,有償双務契約である本件請負契約の性質に即して,当事者の意思を合理的に解釈すれば,本件代金の支払につき,Yが上記支払いを受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず,本件請負契約においては,Yが上記請負代金の支払を受けたときは,その時点で本件代金の支払期限が到来すること,また,Yが上記支払いを受ける見込みがなくなったときは,その時点で本件代金の支払期限が到来することが合意されたものと解するのが相当である。
■コメント
本件合意については,停止条件なのか不確定期限なのかが文言上明らかでない。従って,合理的意思解釈が問題となる。原審は,Yは契約上何ら利益を得ておらず(受注金額と発注金額は同額であった。),代金支払の中継役にすぎなかったものとして,本件入金リンク条項はYが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨の合意であるとした。しかし,最高裁は,有償双務契約たる請負契約において注文主の請負代金支払義務を停止条件付とすることは通常は想定し難く,また本件請負契約は公共事業に係るもので請負代金の支払が確実であることを前提に締結されたものと見るのが相当であるとして,原審判決を破棄差戻したものである。
 
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