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判例

判例チェック No.25 最三小判平成23年2月22日

カテゴリ:判例
判例チェック №25 
最三小判平成23年2月22日(最高裁HP搭載)
 
★チェックポイント
「相続させる」旨の遺言は、当該遺言で相続させるとされた相手方推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、相手方推定相続人の子に「相続させる」効力があるか(消極)
■事案
遺言者Aは、平成5年に子の一人Bに全遺産を相続させる旨の本件遺言をしたが、Bは、平成18年6月21日にその子Cらを残して死亡し、次いで遺言者は、同年9月23日に死亡した。
Aの子でBの兄弟DはCらに対し、全遺産が自己に帰属する旨の確認を求めて出訴し、勝訴した。Cらは上告し、本件遺言においてAの遺産を相続させるとされたBがAより先に死亡した場合であっても,本件遺言は効力を失うものではなく、Bの代襲者である上告人らが本件遺言に基づきAの遺産を代襲相続することとなる旨主張した。
■判旨
自己が死亡時に有する財産(遺産)「の承継に関する遺言をする者は,一般に,各推定相続人との関係においては,その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係,各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力,特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無,程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。このことは,遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し,当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく,このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。したがって,上記のような「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」
■コメント
「相続させる」遺言で指定された受益相続人が遺言者より先死・同死した場合、遺言が失効するかについての最高裁の新判例であるが、通説に従ったものといえよう。
ただ、判旨のうち「したがって」以下の遺言の解釈についての説示部分は、特に目新しいものではなく、本件事案では全遺産を特定の推定相続人に相続させることと、遺言執行者の指定の2か条のみの公正証書遺言であるから、解釈の余地はなく、単なる傍論にすぎず、ことさら説示するのは一人歩きの危険がある。判示の「特段の事情」の有無は、要式性の要請から遺言の文言を離れては解釈が許されず、遺言作成上留意するべきである。問題回避には、傍論部分の説示を考慮し、予備的遺言をしておくか、遺言作成後は事情の変化をフォローして随時適切な遺言に作り替えておくことが重要である。
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