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判例

判例チェック No26 大阪地裁平成22年5月25日判決

カテゴリ:判例
判例チェック№26 
大阪地裁平成22年5月25日判決(判例時報2092号106頁)
 
★チェックポイント
請負業者と注文者との間の建築請負代金の減額合意が,請負業者の運転資金の困窮に乗じたもので,当該請負工事の原価を超える部分の減額合意を公序良俗に反し無効として,不当利得返還請求を認めた例。
■事案
AはYの設立当初からYの直営店舗及びフランチャイズ加盟店の店舗等の内装工事を請け負い,破産開始決定を受けるまで取引関係は継続していた。YはAに対し,平成17年ころ以降,工事内容や請負代金額を決定しないまま,しかも,着手金や中間金も支払わないまま着工させ,工事完成引渡後,請負代金額の査定を経て初めて請負代金を支払っていた。
請負金額の査定は,YのB部長がAの見積書等に基づいて積算した金額を,C部長とDが追加工事の有無にかかわらず基本工事の坪単価に坪数を乗じるなどの方法で算定した金額をもとに更に減額して最終査定額としたものであって,B部長の査定額の8割を下回る部分はAが支出した原価にも満たない金額であった。しかし,Y関連工事の割合は,本件各店舗工事が行われた平成18年ころには,Aの全受注件数の9割を超えており,Aは,その資金繰りをYからの請負代金の一括支払金に依存していたため,Yの査定金額に応じざるを得なかった。
その後,Aは破産し,その破産管財人XがYに対し,B部長の査定額の8割を下回る部分について不当利得の返還を求めた。
■判旨
自らが優越的地位にあり,Aが従属的地位にあることを利用して不当に利益を取得するために本件各減額合意をなしたものといわざるを得ず,本件各減額合意は,独占禁止法2条9項5号に違反しているか否かはさておき,私法上においては,少なくとも上記の限度で,公序良俗に反し,無効である。したがって,Yは,法律の原因なく,本件各店舗ごとの,B部長の査定額の8割に相当する額と本件各合意に基づきYが支払った金額との差額の合計相当額の支払いを免れ,これによりAは上記相当額の損失を受けたというべきである。従って,YはXに対し,[不当利得に基づき]上記相当額の返還義務を負う[。]
■コメント
同種事案の参考事例として紹介する。
なお,Aは,接待の強要があったとしてYの不法行為(予備的に不当利得)を主張し,支出金額の半額の賠償(又は不当利得返還)を同時に請求したが,営業活動としての接待の範囲を逸脱するものではないとして請求を棄却されている。
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