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判例

判例チェック No.33 (1)最高裁判所第三小法廷平成23年11月22日判決(2)最高裁判所第一小法廷平成23年11月24日判決

カテゴリ:判例
判例チェック№33 
(1)最高裁判所第三小法廷平成23年11月22日判決
(2)最高裁判所第一小法廷平成23年11月24日判決(判例時報2134号62頁)

★チェックポイント
(1)求償権が破産債権である場合において財団債権である原債権を破産手続によらないで行使することの可否(破産会社の従業員の給料債権を立替払いした者は,破産者に対し,破産手続によらずに給料債権を請求することができる。)
(2)求償権が再生債権である場合において共益債権である現債権を再生手続によらないで行使することの可否
(1)について
<事案の概要>
日用雑貨品等の販売会社であるXは,取引先であり新聞販売店を経営する会社であるAから委託を受け,平成19年8月21日,Aの従業員9名の同年7月分の給料債権合計237万円余り(破産法149条1項により財団債権となり,破産手続によらないで随時弁済を受けることができる。)を弁済し,これと同時に従業員らの承諾を得た(民法499条1項参照)。Aは,同年8月29日破産手続開始の決定を受けた(従って,XのAに対する求償権は,破産債権であり,破産法100条1項により破産手続きによらなければ行使することができない。)。Xは右従業員らに代位して,Aの破産管財人であるYに対し,破産手続によらないで,右給料債権の支払を求めた。
<判旨>
弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権に過ぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる。
(2)について
<事案の概要>
船舶空調の設計施工会社Aは,平成19年9月,韓国の造船会社であるSTX社との間で,船舶で使用する断熱材の製造を目的とする請負契約を締結し,平成20年1月頃,STX社から右請負契約の報酬の一部である約230万米ドル(約2億6477万円)を前途金として受領した。
Aは同年6月,再生手続開始の決定を受け,Aの再生管財人に選任されたYは,同年7月,民事再生法49条1項に基づき,STX社に対し,右請負契約を解除する旨の意思表示をした(右前渡金の返還請求権は,民事再生法49条5項,破産法54条2項により共益債権となり,民事再生法121条1項により再生手続によらないで随時弁済される。)。上記再生手続開始前に本件前渡金の返還債務を保証していたXは,同年8月8日,STX社に対し,同債務を代位弁済した(従って,XのAに対する求償権は再生債権であり,民事再生法85条1項により再生計画の定めるところによらなければ弁済をすることができない。)。XはYに対し,再生手続によらないで,上記前渡金の返還を求めた。
<判旨>
弁済による代位により民事再生法上の共益債権を取得した者は,同人が再生債務者に対して取得した求償権が再生債権に過ぎない場合であっても,再生手続によらないで上記共益債権を行使することができる。
コメント
弁済によって得た求償権が破産債権である場合において弁済者は財団債権である原債権を破産手続によらないで行使することができるかという問題について,下級審裁判例と学説は大きく分かれていたが,最高裁は肯定説に立つことを明らかにした。弁済代位は求償権を確保するための制度であり求償権のための担保的機能を有すること,否定説は代位弁済者の犠牲の下で他の債権者が偶然の利益を得ることを許す結果となり不相当であること等から肯定説が合理的であると考えられる。建築工事の下請業者が倒産の危機に瀕した場合,特定建設業者である元請業者は建設業法41条2項の勧告を嫌って下請労務賃金を立替払いする例が少なくないが,掲記の最高裁判決により,元請業者は二重払いのリスクを犯すことなく下請労務賃金を代位弁済できる余地が広がったものと言える。
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