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判例

判例チェック No.34 最高裁判所第二小法廷平成24年5月28日判決・預金返還請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック№34 
最高裁判所第二小法廷平成24年5月28日判決・預金返還請求事件(出典最高裁HP)
 
☆チェックポイント
保証人は、主たる債務者の破産手続開始前に主たる債務者から委託を受けないで締結した保証契約に基づき、同手続開始後に弁済をして主たる債務者に対し求償権を取得した場合、保証人がこの求償権をもって主たる債務者に対する債務を相殺できるか(消極)
■裁判例の概要
(事案の概要)
破産管財人が破産者と取引銀行(被上告人)間 当座勘定取引契約 解約による払戻金の支払請求
取引銀行は、破産者の債務につき、債権者との間で、保証契約を締結していたところ、破産手続開始後、保証債務を履行し、破産者に対する求償権を取得し、これを自動債権とする相殺を主張した。しかし、取引銀行の保証契約は、債務者(破産者)の買掛債務の保証であるが、債務者(破産者)の委託を受けていないものであった。
(判旨)
無委託保証人が主たる債務者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が取得する求償権を自働債権とし,主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は,破産法72条1項1号の類推適用により許されないと解するのが相当である。
●コメント
判旨が理由とするところは、「破産者に対して債務を負担する者が,破産手続開始前に債務者である破産者の委託を受けて保証契約を締結し,同手続開始後に弁済をして求償権を取得した場合には,この求償権を自働債権とする相殺は,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである。」「しかし、無委託保証人が破産者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をして求償権を取得した場合」「この求償権を自働債権とする相殺を認めることは,破産者の意思や法定の原因とは無関係に破産手続において優先的に取り扱われる債権が作出されることを認めるに等しいものということができ,この場合における相殺に対する期待を,委託を受けて保証契約を締結した場合と同様に解することは困難というべきである。そして,無委託保証人が上記の求償権を自働債権としてする相殺は,破産手続開始後に,破産者の意思に基づくことなく破産手続上破産債権を行使する者が入れ替わった結果相殺適状が生ずる点において,破産者に対して債務を負担する者が,破産手続開始後に他人の債権を譲り受けて相殺適状を作出した上同債権を自働債権としてする相殺に類似し,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続上許容し難い点において,破産法72条1項1号が禁ずる相殺と異なるところはない。」というものである。
以上
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