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判例

判例チェック No35 最高裁判所第三小法廷平成24年7月24日決定 ・債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

カテゴリ:判例
判例チェック№35 
最高裁判所第三小法廷平成24年7月24日決定 ・債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 (出典最高裁HP)
 
☆チェックポイント
普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権として表示した債権差押命令の申立ては適法か(消極)
■裁判例の概要
(事案の概要)
抗告人は,相手方の第三債務者Z銀行に対する特定の普通預金口座に係る普通預金債権の差押を求める申立書に,差し押さえるべき債権(以下「差押債権」という。)として,上記普通預金債権のうち差押命令送達時に現に存する部分(以下「現存預金」という。)だけでなく,差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分(以下「将来預金」という。)も表示し,差押えの順序を当該入金時期の早いものから差押債権目録記載の金額に満つるまでとしたところ、 原審は,本件申立てを却下したが、その理由は、(1) 将来預金を差押債権とする差押命令の申立ては,第三債務者が差し押さえられた債権を識別することができるとはいえず,差押債権の特定を欠く。(2) 本件申立ての差押債権の表示は,現存預金だけでなく将来預金を含んでいるから,差押債権そのものの特定が不十分であり,本件申立ての全部が不適法となる。
(判旨)
普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権として表示した債権差押命令の申立ては,差押債権の特定を欠き不適法である。
●コメント
本判例中「債権差押命令の申立てにおける差押債権の特定は,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならない」との点は、最高裁平成23年9月20日第三小法廷決定・民集65巻6号2710頁(判例チェック№31)と同じであり、確定判例といえる。これは、差押債権特定の基準の一つとして、差押債権の範囲を識別するのが容易であるかの識別容易性を挙げたものといえる。
本件申立事例のとおりの債権差押命令が送達された当時、預金残高が差押債権額に満たない場合には、第三債務者Z銀行は、送達後1年間は、払戻請求がなされた都度、預金残高が差押債権額以下にならないか算定しなければ払戻ができないことになる。ところが、Z銀行は、窓口の営業時間外でもATMやインターネットにより随時普通預金口座の出入金が可能である一方、特定の預金口座について出入金を自動的に監視し、一定の預金残高を超える部分のみ払戻を可能とする金融システムが構築されていないので、払戻の可否判断の前提となる算定が困難であり上記確定判例に照らし識別容易性の基準を充たしたといえず、よって、本件申立のうち将来預金(差押命令送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる預金)の差押を求める部分は、債権の特定性の記載を欠き不特定であるとしたものである。
以上
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