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判例

判例チェック No.37 東京高裁平成24年6月4日判決

カテゴリ:判例
判例チェック№37
東京高裁平成24年6月4日判決(判例時報2162号54頁)

★チェックポイント
 債務を負担する会社及びこれと関連する他の会社とに共通する事情により法人格の形骸化があって共に法人格を否定すべきであるとして、これらの会社及びそのうち数社の代表取締役でこれらの会社全体の実質的支配者である個人が当該債務の連帯支払を命じられた事例
■事案の概要
Xは第1及び第2の金銭消費貸借の借受人であったが、弁済により貸主に対し過払金返還請求権を有するところ、第1の金銭消費貸借の貸主はY1会社、第2の金銭消費貸借の貸主はY2会社である。Y3は貸主Y1、Y2 の代表取締役である。またY4会社、Y5会社及びY6会社は貸主ではないが、Y4、Y5の代表取締役はY3である。なお、Y6の代表取締役は訴外Zである。
本判例は、XのY1ないしY6に対する過払金の返還請求を認容した。
■判決の概要
その理由とするところは、要するに、Y3以外のYら会社は、Y3により法人格が形骸化しているかまたはこれら会社の法人格が濫用されているとし、「法人格形骸化の判定基準としては、株主が当該法人を実質的に支配していることに加えて、会社財産と支配株主等の財産の混同(営業所や住所の共有、会計区分の欠如等)、会社と支配株主等の業務の混同(外見による区分困難、同種事務の追行等)、株主総会・取締役会の不開催、株券の違法な不発行など会社法、商法等により要求される手続の無視、不遵守といった兆候が見られるかどうかにある」とすることが相当である、また、「法人格の濫用とは、法人格が、株主個人又は親会社により意のままに道具として支配され(支配要件)、その法人格を利用することにつき、支配者に違法または不当な目的(目的要件)がある場合をいうものと解されるとの判断枠組みに従い、本件での種々の間接事実(紹介者注:どのような事情が間接事実となるかは、直接判文に当たられたい。)から判断すると、法人格の形骸化、法人格の濫用があるといえる。」そして、「実質的な支配者が運営する複数の関連会社の法人格が否認される場合には、支配者のほか、複数の関連会社の全員が一体となって形骸化している法人格及び濫用された法人格による利益を享受していると見ることができるから、複数の関連会社がそれぞれ支配者個人と連帯債務関係に立つと同時に複数の関連会社全体が支配者個人を介して連帯債務関係に立つと解すべきである」と結論づけている。
★コメント
本判例は、最高裁昭和44年2月27日判決に従うものであるが、Y1、Y2、Y4が著名な租税回避地に形式的な本店を置き僅少といえる資本金額で複数の会社を設立しており、Y3の関連会社が営業実態も曖昧といえる特殊な事例に関し、法人格形骸化、法人格否認の判断基準を明示し、諸々の間接事実の評価から判断基準に該当するとして、全法人格濫用会社及び全体の実質的支配者の連帯責任を認めた点で意義のある判例である。
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