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判例

相続を争族にしないために(2)― 遺贈の利用 ―

カテゴリ:相続
相続を争族にしないために(2)― 遺贈の利用 ―
 
1 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」との遺言をすると、その遺産は、遺言者の死亡と同時に、遺言で指定 された相続人の所有になることは、前回述べたとおりです。
  その他に、遺言者死亡と同時にその遺産を遺言者の指定する者の所有にしてしまう遺言の方法として、遺贈と遺言執行者の指定をセットにする方法があります。
2 遺贈とは、わかりやすい例でいうと、「父親(遺言者)が死んだらその財産(遺産)を息子に遣る」という遺言です。法律的に説明すると、遺言者が死亡した時にその指定する遺産の全部又は一部を遺言者の指定した者(受遺者)のも のにする(受遺者に権利が移転する)ことです。ただ、この遺言者の考え(遺贈の意思)は、遺言で表明(表示)されな ければ、無効です。
3 相続させる遺言との大きな違いは、相続させる遺言では、相手方(受益者)は相続人に限られるが、遺贈では、相続人に限られません。
また、遺言の執行という問題が残ります。例えば遺贈する財産が不動産ならば、登記をしないと受遺者は完全な意味で権利を取得できないし、株券等有価証券では名義書換が必要です。ところが、登記や名義書換手続には、相続人全員の同意・捺印が必要です。これは、争族の原因になります。
4 これを避けるには、遺言で遺言執行者(遺言執行人)を指定しておくと、その者が相続人全員の代理人となり、受遺者との間で登記・名義書換手続をすることができるようになります。遺言執行者として信用できる人を選ぶべきですが、適当な人物を捜せない場合は、例えば「遺言執行者として大阪弁護士会の会長が指定する弁護士を指定する」という遺言もできますが、弁護士に対しては遺言執行の報酬を支払う必要があり、受遺者がこれを負担しなければなりません。
 遺言執行者を指定する場合は、一人にしても数人にしてもかまいません。また、遺言が直接特定の人を指定してもよいし、また、誰を遺言執行者とするかの指定を特定の人に委託してもよいことになっています。前に述べたのは「大阪弁護士会の会長」に指定を委託した例です。
5 折角遺言で指定しても、指定を受けた人が遺言者死亡後遺言執行者に就任を承諾せず拒絶することもできます。 それで、遺言をするに当たり、予め遺言執行者に就任の承諾を取っておいた方が確実です。
  遺言で指定された人が就任を拒絶した場合、受遺者その他利害関係人は、家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることができます。(文責:野田殷稔)
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