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判例

改正会社法チェック No.1

カテゴリ:改正会社法
改正会社法チェック№1

★チェックポイント
 社外取締役等の要件の厳格化(ただし,一部緩和)
■改正の内容
 1 改正会社法の規定
社外取締役の要件について,現行会社法は,「株式会社の取締役であって,当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく,かつ,過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。」と定めているが,改正会社法においては,知見を有する人材を広く確保するとともに,社外取締役等による監視機能を強化する観点から,以下のとおり変更している。なお,社外監査役の要件についても同旨の変更をしている。
ただし,社外取締役等の要件については,改正会社法の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結までは,なお従前の例による旨の「経過措置」が定められている。

イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく,かつ,その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ロ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役,会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては,当該取締役,会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
 2 現行会社法からの主な変更点
 (1)上記イについては,現行会社法では過去に一度でも業務執行取締役等であった場合には,社外取締役になることができないものとされているが(現行会社法2条15号),改正会社法においては,人材確保の観点から業務執行取締役等であった場合でも10年経過している場合には社外取締役となることを認め,要件を緩和した。
 (2)上記ロについては,上記イに関連して,業務執行取締役等を退任してから10年経過する前に業務執行取締役等以外の取締役等に就任している場合には業務執行取締役等以外の取締役等を退任してから10年経過していなければ社外取締役になることを認めない。
 (3)上記ハについては,現行会社法では,親会社等の取締役等でないことは社外取締役の要件ではないが,改正会社法においては,「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと」という要件を加え,厳格化を図った。なお,「親会社等(自然人であるものに限る。)」については,親会社および株式会社の経営を支配している者として法務省令で定められるが,議決権の過半数の株式を有する株主等が考えられる。
    また,社外監査役の要件についても,「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役,監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと」が1つの要件として追加されており,留意する必要がある。
 (4)上記ニについては,現行会社法では,いわゆる兄弟会社(同一の親会社等をもつ子会社等)に関する規制はないが,改正会社法においては,兄弟会社の業務執行取締役等ではないことを要件として加え,厳格化を図った。
 (5)上記ホについては,現行法では,取締役等の配偶者等でも社外取締役になることができるが,改正会社法においては,取締役,執行役,支配人,重要な使用人,親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者や2親等内の親族(親,子,兄弟姉妹等)は,社外取締役になることを認めず,要件の厳格化を図った。なお,「重要な使用人」とは,取締役等の業務執行者に準ずる者(執行役員等)をいうものと解されている。
■コメント
 会社法の一部を改正する法律が平成26年6月20日に成立し同月27日に公布された(公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される)。
 今回の会社法の改正は,「株式会社をめぐる最近の社会経済情勢に鑑み,社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化並びに株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図るため,監査等委員会設置会社制度を創設するとともに,社外取締役等の要件等を改めるほか,株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟の制度の創設,株主による組織再編等の差止請求制度の拡充等の措置を講じようとするもの」であり(議案要旨参照),今回概説した改正部分は,そのうちの「社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化」に関するものである。
 なお,重要な取引先の関係者ではないことを追加することも議論されたが,法制審議会における議論の結果,今回は見送られた。
今後,順次,改正会社法の内容を概説できればと考えている。
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