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判例

改正会社法チェック No.2

カテゴリ:改正会社法
改正会社法チェック№2

★チェックポイント
 社外取締役を置かない場合の理由開示義務
■改正の内容
 1 改正会社法の規定
(社外取締役を置かない場合の理由の開示)
第327条の2 事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には,取締役は,当該事業年度に関する定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。
(検討)
附則第25条 政府は,この法律の施行後二年を経過した場合において,社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し,企業統治に係る制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。
 2 規定の趣旨等
 (1)社外取締役を置かない場合の理由開示義務
    一定の監査役会設置会社について,社外取締役を置いていない場合に,取締役は,当該事業年度に関する定時株主総会において,「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならない。かかる規定は,間接的に社外取締役を選任することを促進する目的があるものと考えられる。
「社外取締役を置くことが相当でない理由」については,社外取締役に適任者がいないなどと説明することでは足りず,社外取締役を置くことがかえって会社に悪影響を及ぼすことなどの事情を具体的に説明することが必要であると考えられる。
なお,法務省令の改正により,「社外取締役を置くことが相当でない理由」が事業報告における開示事項とされることが予定されている。
 (2)附則25条
    施行後2年を経過した段階において,社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し,社外取締役を置くことの義務付けを検討することとしている。かかる附則は,社外取締役の義務付けをすべきであるとの意見を踏まえて設けられたものと言える。
◆コメント
 前回は,「社外取締役の要件」の改正について説明したが,今回は,その社外取締役を置かない場合に,社外取締役を置くことが相当でない理由を開示する義務が定められたことについて説明した。
 法制審議会会社法制部会においては,社外取締役による取締役の業務執行に対する監督機能の活用を図るため,監査役会設置会社に社外取締役の選任を義務づけるべきではないか,という意見が出されていたが,経済界の反対もあり,最終的には見送られた。ただし,上記のとおり,社外取締役を置かない場合の理由開示義務を規定することにより,間接的に社外取締役の選任を促す効果を期待している。これは,一般に,欧州で活用されている,いわゆる「Comply or Explain」(応諾か釈明か)を,日本流にアレンジして導入するものであると説明されているが,かかる効果については,「社外取締役を置くことが相当でない理由」について,どこまで具体的な内容を求めるかにかかっているものと考える。
なお,東京証券取引所においては,上場会社は,取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない旨規定し,平成26年2月10日から施行している。
社外取締役による監督機能の実効性については,今後の実務における動向を注視していく必要があるものと思料する。
以上
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