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判例

判例チェック No.56 大阪地裁平成25年6月20日判決・損害賠償等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェックNo.56
大阪地裁平成25年6月20日判決・損害賠償等請求事件(判時2218号112頁)
 
★チェックポイント
 ウェブサイト上に映画の著作物への埋め込み型リンクを貼る行為による著作権(公衆送信権)侵害の成否(消極)
■事案の概要
 Xは,ユーザーがライブストリーミング配信を行うことができるウェブサイト「ニコニコ生放送」において,飲食店等での自身の行動の生中継動画を配信し,何者かによって当該動画の一部(以下「本件動画」という。)を動画共有サイト「ニコニコ動画」にアップロードされたところ,ニュース記事配信のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を運営するYにおいて,本件ウェブサイト上に本件動画のいわゆる埋め込み型リンクを貼り,これを視聴できる状態にするなどした行為が,Xの著作権(公衆送信権)等を侵害するとして,損害賠償等を請求した。
■判決要旨(請求棄却)
 著作権(公衆送信権)侵害に関する判示部分のみ引用する。
 「Yは,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
 この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
 すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,Yがこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理するYが,本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。」
★コメント
 ウェブサイトへのリンクの貼付けについては,リンク元がリンク先の情報を送信しているものではないとして,公衆送信権を侵害することはないと考えられていたところ,本判決は,この問題について判断した初の裁判例であり,従来の考え方が裁判上も認められることが明らかとなった(複製権侵害についても同様に否定されると思われる。)。
 また,本判決は,埋め込み型リンクの貼付けは「公衆への提供若しくは提示」(著作権法19条1項)に当たらないため,氏名表示権侵害の前提を欠くとし,著作者人格権侵害も否定した。もっとも,埋め込み型リンクやディープリンク等については,著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,みなし侵害)の問題になると指摘する学説も多く,実務上は,著作者人格権に配慮した対応が必要となる。
 なお,本判決は,第三者の公衆送信権侵害の幇助による不法行為の成否も争点となったが,(1)本件動画についての著作権者の許諾の有無が,その内容や体裁上明らかでないこと,(2)YがXから抗議を受け,直ちにリンクを削除したことを踏まえ,当該不法行為の成立も否定した。したがって,違法アップロード動画と認識しながらリンクを貼り付けたり,著作権者からの抗議後もリンクを削除しなかったりすると,別途,不法行為が成立するおそれもある。
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