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判例

改正会社法チェック No.3

カテゴリ:改正会社法
改正会社法チェック№3

★チェックポイント
 監査等委員会設置会社の創設
■改正の概要
現行法においては,監査役会設置会社や委員会設置会社等が存するが,改正会社法においては,社外取締役による監督機能を活用するため,新たに「監査等委員会設置会社」を創設する。これは,大会社か否か公開会社か否かにかかわらず設置することが可能である。
監査等委員会とは,監査等委員である取締役3名以上で構成するもので,その過半数は社外取締役でなければならない。監査等委員会設置会社には,取締役会及び会計監査人を設置する必要があるが,監督機能の重複を避けるため,監査役を設置することはできない。また,指名委員会や報酬委員会の設置は義務付けられていない。
監査等委員会設置会社においては,監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して選任しなければならない。監査等委員の独立性を確保するため,監査等委員である取締役の任期は2年,監査等委員以外の取締役の任期は1年となっているほか,監査等委員である取締役の報酬等は,監査等委員以外の取締役と区別して定めなければならない。
監査等委員会及び監査等委員の権限については,委員会設置会社の監査委員会及び監査委員が有する権限とそれぞれ同様の権限を有しており,内部統制システムを通じて監査を行うことが考えられている。また,監査等委員は,取締役会での議決権の行使を通じて監督することが期待されているが,株主総会において,監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬等について,監査等委員会の意見を述べることができるほか,利益相反取引について,監査等委員会が事前に承認した場合には,取締役の任務懈怠を推定する規定は適用されない,という権限も有している。また,取締役会の決議によって,指名委員会等設置会社において取締役に委任できないとされている事項に相当する事項を除き,「重要な業務執行の決定」(重要な財産の処分等)を取締役に委任することができる。ただし,かかる委任を行うためには,監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役でなければならない。
◆コメント
監査役会設置会社については,「少なくとも2人の社外監査役を置くことが義務付けられている(第335条第3項)ため,これに加えて監督機能を果たすために社外取締役も置くことについては,重複感・負担感があり,社外取締役の機能の活用という観点からは,必ずしも利用しやすい機関設計となっていないとの指摘がなされて」おり,指名委員会等設置会社については,「取締役の選解任に関する議案内容を決定する指名委員会,取締役・執行役の個人別の報酬内容又は報酬内容の決定に関する方針を決める報酬委員会を置き,加えて,その構成について社外取締役を過半数とすることへの抵抗感等があり,実際の活用は極めて限られているばかりか,近年では,次第に減少してさえ」いるとの指摘がなされている(阿部泰久『立法経緯から読む 会社法改正』(新日本法規,2014)46頁)。因みに,平成26年5月1日現在の指名委員会等設置会社の数は,東証1部45社,東証2部3社,マザーズ2社,ジャスダック6社,セントレックス1社の合計57社のようである(阿部泰久『立法経緯から読む 会社法改正』(新日本法規,2014)46頁)。 このような状況のもと,新たな創設される監査等委員会設置会社は,監査役会設置会社と委員会等設置会社の折衷的な機関設計と評されており,今後の活用が期待されるところである。
以上
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