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判例

判例チェック No.58 最高裁判所第二小法廷平成26年12月12日 判決・平成24年(受)第2675号相続預り金請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック№58
最高裁判所第二小法廷平成26年12月12日 判決・平成24年(受)第2675号相続預り金請求事件
(出典 最高裁ホームページ)

★チェックポイント
委託者指図型投資信託の受益権の共同相続開始後に元本償還金等が発生し預り金として同受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合に,共同相続人の1人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求できるか(消極)
■裁判例の概要
(事案の概要)
亡A(平成8年10月死亡)は、B証券株式会社から複数の投資信託受益権(以下「本件投資信託」という。)を購入し、その死亡時本件投資信託にかかる受益権(以下「本件投資信託受益権」という。)を有していた。上告人は、亡Aの法定相続人3名のうちの一人で3分の1の法定相続分を有している。一方、平成8年11月から平成10年9月までの間に発生した本件投資信託の収益分配金及び平成16年に発生した本件投資信託の元本償還金は,B証券又は同社を吸収合併した被上告人の亡A名義の口座に預り金として入金された(以下,この預り金を「本件預り金」といい,その返還を求める債権を「本件預り金債権」という。)。上告人は、被上告人に対し、本件預り金の3分の1に当たる金員及びこれに対する遅延損害金の支払を求めて棄却され、上告した。
(判旨の概要)
共同相続された上記受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し,それが預り金として本件投資信託受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合にも,本件預り金の返還を求める本件預り金債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく,共同相続人の1人は,上記販売会社に対し,自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができないというべきである。
■コメント
本判決の理由中に引用されている最高裁平成26年2月25日判決(判例チェック47で紹介済み)は、「本件投信受益権のうち,本件有価証券目録記載3及び4の投資信託受益権は,委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律2条1項)に係る信託契約に基づく受益権であるところ,この投資信託受益権は,口数を単位とするものであって,その内容として,法令上,償還金請求権及び収益分配請求権(同法6条3項)という金銭支払請求権のほか,信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権(同法15条2項)等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており,可分給付を目的とする権利でないものが含まれている。このような上記投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,共同相続された上記投資信託受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。」と判示している。この判例に基づき、本判例は、「本件投信受益権は、委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律2条1項)に係る信託契約に基づく受益権であるところ,共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」ところ、「元本償還金又は収益分配金の交付を受ける権利は、」前記判例のいうとおり「本件投信受益権の内容を構成するものであるから、本件預り金の返還を求める債権(本件預り金債権)も相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないと判示した。よって委託者指図型投資信託受益権はもとより、これより生じた収益分配金及び元本償還金が委託者名義の受託者口座に預り金として入金された場合、その返還を求める債権は、共同相続人全員によるか、または遺産分割を経由しなければ請求できないことが明らかにされた。
 
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