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判例チェック No.8 最高裁第三小法廷平成20年12月16日判決 動産引渡等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック No.8 
最高裁第三小法廷平成20年12月16日判決 動産引渡等請求事件
 
(判例時報2040号16頁)
★チェックポイント 
フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の「民事再生手続開始の申立てがあったときは,リース業者は催告をしないで契約を解除することが出来る」旨の特約を無効とした例
■判旨
一審は,リース契約の解除は担保権の実行であり,民事再生手続において担保権は別除権として再生手続によらずに行使することができ(民事再生法53条2項),民事再生手続との関係では,別徐権行使の方法を定める解除特約を無効とすることはできないとして,リース契約の解除の効力を認めた。これに対し,控訴審は,民事再生手続開始の申立てがあったことのみを理由にリース業者がリース物件を取り戻せるとすると,民事再生手続の目的である「債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業または経済生活の再生を図る」ことが困難になることから,当該特約は民事再生法の趣旨,目的を害するものとして無効とした。
最高裁第三小法廷判決は,「民事再生手続は,経済的に窮境にある債務者について,その財産を一体として維持し,債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整して,債務者の事業又は経済生活の再生を図るものであり(同法1条参照),担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる。ファイナンス・リース契約におけるリース物件は,リース料が支払われない場合には,リース業者においてリース契約を解除してリース物件の返還を求め,その交換価値によって未払リース料や規定損害金の弁済を受けるという担保としての意義を有するものであるが,同契約において,民事再生手続開始の申立てがあったことを理由に解除事由とする特約による解除を認めることは,このような担保としての意義を有するにとどまるリース物件を,一債権者と債務者との間の事前の合意により,民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ,民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることに他ならないから,民事再生手続の趣旨,目的に反することは明らかというべきである。」として,上告を棄却した。
■コメント
民事再生手続の流れとリース業者の権利行使の関係について,下記のとおり田原睦夫裁判官の補足意見が付されている。
「ユーザーたる再生債務者が,民事再生手続開始の申立てをし,その決定を得た場合,再生債務者は,その保全処分の効果として,リース料金についても弁済をなすことを禁じられ,その反射的効果として,リース業者も,弁済禁止の保全処分によって支払を禁じられた民事再生手続開始の申立以降のリース料金の不払いを理由としてリース契約を解除することが禁止されるに至る……民事再生手続が開始された場合,その開始決定の効果として,再生債権の弁済は原則として禁止される(民事再生法85条1項)が,弁済禁止の保全処分は開始決定と同時に失効するので,再生債務者は,リース料金について債務不履行状態に陥ることとなる。したがって,リース業者は,別徐権者としてその実行手段としてのリース契約の解除手続等を執ることができることとなる。そして,再生債務者は,民事再生手続の遂行上必要があれば,これに対し,担保権の実行手続の中止命令(同法31条1項)を得て,リース業者の担保権の実行に対抗することができると考える。」
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