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判例

判例チェック No.9 最高裁平成21年4月17日第二小法廷判決 約束手形金不当利得返還等請求事件(上告受理)

カテゴリ:判例
判例チェック No.9 
最高裁平成21年4月17日第二小法廷判決 約束手形金不当利得返還等請求事件(上告受理)
 
(判例時報2044号142頁)
★チェックポイント
株式会社の代表取締役がした取引が、取締役会の決議を経ないでなした重要な業務執行に該当するため無効である場合、当該会社以外の者はその無効を主張できるか(消極)。
■判旨
株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、これを主張することはできないと解するのが相当である。
■説明
事案を要約すると、債務者が債権譲渡につき譲渡人会社の取締役会決議がないとの理由で無効と主張した事例である。譲受人会社の代表取締役は、同債権の譲渡契約を締結した当時、譲渡人会社の代表取締役がその債権譲渡契約につき取締役会の決議を経ていないこと、譲渡人会社は同債権以外に価値のある財産を殆ど有しなかったことを知っていた。譲受人会社が債務者に対し、譲受債権の支払請求訴訟を提起したところ、原判決は、債権譲渡が重要財産の譲渡に該当すること、取締役会の決議がないことを譲受人会社は知っていたから債権譲渡は無効であると判断した。
本判決は、判旨の理由として、会社法362条4項(旧商法260条2項)は、「同項1号に定める重要な財産の処分を含めて重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めているので、代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行をすることは許されないが、代表取締役は株式会社の業務に関して一切の裁判上裁判外の行為をする権限を有することにかんがみれば、代表取締役が取締役会の決議を経ないでした重要な業務執行に該当する取引も、内部的な意思決定を欠くに過ぎないから、原則として有効であり、取引の相手方が取締役会の決議を経ていないことを知り又は知り得べかりしときに限り無効となると解される(最高裁昭和40年9月22日第3小法廷判決)。そして同項が重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めたのは、代表取締役への権原の集中を抑制し、取締役相互の協議による結論に沿った業務の執行を確保することによって会社の利益を保護しようとする趣旨に出たものと解される。」と説示している。
本判決は、以上の見地から、株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないでなした重要な業務執行に該当する取引の無効は、(1)原則として、当該会社だけが主張することができる、(2)当該会社以外の者は、当該会社の取締役会が無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、無効を主張できないとする。
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