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判例

判例チェック No.39 東京高裁平成24年2月28日判決・平成23年(ネ)第3653号損害賠償請求控訴事件

カテゴリ:判例
判例チェック№39
東京高裁平成24年2月28日判決・平成23年(ネ)第3653号損害賠償請求控訴事件
判例時報2167号36頁

★チェックポイント
分譲マンションの建築主・分譲者から設計業務及び工事監理業務を委託された会社の代表取締役個人が分譲マンション購入者に対し不法行為の賠償責任があるとされた事例
■裁判例の概要
(事案の概要)
本件分譲マンションの建築主・分譲者から設計及び工事監理を受託した会社(以下「元請会社」という。)は、構造計算を再委託した。実際に構造計算を実行したのは、再々委託を受けた者であり、その作成した構造計算書は建築関係法令基準に適合していると偽装されていた。本件分譲マンションの購入者は、元請会社の代表取締役を被告として、構造計算書等の内容が建築関係法令基準に適合しているかの確認を怠ったことを理由とする損害賠償請求訴訟を提起した。被告は一級建築士であるが、意匠設計を専門としており構造設計は専門外であった。また本件設計当時は構造設計一級建築士の制度はなかった。
(裁判の概要)
一審判決(判例時報2126号73頁)は、本件設計図書中に構造計算書の偽装を疑わせる明らかな徴表がないこと、その場合に被告が構造計算書につき確認するべき範囲は、設計全体との整合性の有無、入力データが意匠等他の設計内容を踏まえた正当性があること、それを踏まえた構造計算の結果に問題がないことに制限されるところ、これらの点では被告に注意義務違反はないなどの理由で代表取締役の個人責任を否定した(前掲書89頁、91頁)。これに対し本判例では逆に原告らの請求が認容されているが、その理由としては、建物の建築設計者は、建物としての基本的安全性が欠如しないよう配慮すべき注意義務を負担すること、被控訴人(被告)は建築主から設計及び工事監理全部を請け負った会社の代表取締役であり、一級建築士としてこれらの業務を全て統括し監督する立場にあり、意匠設計を担当し、建築確認申請書添付の構造計算書の作成名義人であり、施工についての監理者であり、施工全体につき随時必要な情報を収集したり施工担当者に質問や疑問点の確認ができる地位にあったこと、したがって被告は基本設計から竣工に至る全ての段階で、逐次得られた情報を総合的に判断して、本件建物の安全性を常に確認するべき義務があり、仮に基本設計や実施設計の段階で図面を検討して疑問を抱くことがなかったとしても、その後の段階で得られる筈の情報をも総合的に勘案して建物の安全性に問題がないか確認するべき義務があり、この義務を懈怠したと説示されている。
★コメント
本件は上告されているが、本件の訴訟は他にも複数の原告と被告がある共同訴訟であり、そのいずれから上告されたかは明らかにできていない。     (野田)
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