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判例

判例チェック No.44 最高裁第一小法廷平成26年2月27日判決・平成23年(受)第2196号 所有権移転登記手続等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック№44
最高裁第一小法廷平成26年2月27日判決・平成23年(受)第2196号 所有権移転登記手続等請求事件
(出典 最高裁ホームページ)
 
☆チェックポイント(裁判要旨)
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。
★コメント
村落等地域社会がその住民の生活利便に供される土地等の不動産を共同所有する場合、地域住民により構成される権利能力なき社団が当該不動産を総有すると解されるが、登記手続上登記名義人を権利能力なき社団にできないから、便宜上構成員その他の名義に登記されていることが多い。本件事案もその一例であろう(判文によると、上告人は共有持分の登記名義人の一人の相続人というから、登記名義人が複数でそのうち一人につき相続登記がなされ、上告人を除く他の相続人は所有権移転登記に同意していたのかも知れない。)。
周知のとおり、権利能力なき社団が登記名義を回復する場合の先例として、当該社団の代表者が個人として原告となり(講学上の任意的訴訟担当者であろう。)代表者個人名義への所有権移転登記手続請求を認めた判例(本判例で引用されている最高裁第2小法廷昭和47年6月2日判決・民集26巻5号957頁。同判例は、代表者個人は構成員全員のために信託的に個人所有とされたものであるという。)があるが、本件では、当該社団が原告、Aはその代表者の資格において出訴したが、請求の趣旨としては原告ではないA名義への所有権移転登記手続を請求し、原判決は、これを承けて、被上告人(原告)の「代表者A」名義への所有権移転登記手続を命じた。上告人は、原判決は原告(権利能力なき社団)の「代表者A」名義への所有権移転登記を命じるものであり、登記手続上許されないことを命じる判決は違法であるなどとして上告した。
本判決は、(1)権利能力なき社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告的格を有すると解されるとし、(2)上記最高裁判決を引用して、原判決主文はA個人名義への登記手続を命ずる趣旨と解すべきであるとして、上告を棄却した。この場合原判決は当事者でないAに対しても既判力・確定力を生じることになる。
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