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判例

判例チェック No.52 最高裁平成25年11月29日判決・共有物分割等請求事件

カテゴリ:判例
判例チェック№52 最高裁平成25年11月29日判決・共有物分割等請求事件
(判例時報2206号79頁)

★ チェックポイント
1 共有物について遺産の共有持分と他の共有持分とが併存する場合における共有物分割と遺産分割の関係
2 遺産の共有持分について,価格賠償の方法による共有物分割の判決がされた場合に支払われる賠償金の性質等
■ 事案の概要
Xらが,Yらに対し,YらとXらとの共有に属する土地(以下「本件土地」という。)の共有物分割を求める事案である。
本件土地は,平成18年9月当時,X1,X2及びAが共有しており,その共有持分は,X1が72分の30,X2が72分の39,Aが72分の3であった。Aは,平成18年9月に死亡したが,その遺産分割は未了であり,Aが有していた上記共有持分(以下「本件持分」という。)は,Aの夫であるX2並びにAとX2との間の長男であるX3,長女であるY1及び二男であるY2の4名による遺産共有の状態にある。X1は,X3が代表者を務める会社である。
なお,本件土地は地積約240平方メートルの宅地であり,本件土地上にはX1及びX2が所有する建物が存在する上,本件持分に相当する面積は約10平方メートルにすぎず,本件土地を現物で分割することは不可能である。
Xらは,本件土地上にマンションを新築することを計画しているが,Yらとの間で,本件土地の分割に関する協議が調わないため,本件訴えを提起した。Yらは,本件土地の分割方法として,本件持分をX1が取得し,X1がAの共同相続人らに対し本件持分の価格の賠償として466万4660円を支払うという全面的価格賠償の方法による分割を希望している。X1は,その支払能力を有している。
■ 判旨
「共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい,これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁参照)。」
「そうすると,遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には,遺産共有持分権者に支払われる賠償金は,遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから,賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきである。」
「そして,民法258条に基づく共有物分割訴訟は,その本質において非訟事件であって,法は,裁判所の適切な裁量権の行使により,共有者間の公平を保ちつつ,当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと,裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。」
★ コメント
1 共有物について遺産の共有持分と他の共有持分とが併存する場合における共有物分割と遺産分割の関係
本判例の引用する最高裁昭和50年11月7日判決(民集29巻10号1525頁)は,遺産を公正する特定不動産について,共同相続人の一部が自らの共有持分を第三者に譲渡し,その共有持分が遺産から逸出した場合,当該第三者が他の共同相続人との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は,共有物分割訴訟であると解するのが相当である旨判示した。この昭和50年判決は,遺産の共同相続人ではない者を遺産分割審判の当事者に取り込むことの不都合を避けつつ,共有物分割が遺産分割に先行することによって共同相続人の有する遺産分割上の権利が害される結果を避けたものと評されている(判例時報2206号80頁参照)。
2 遺産の共有持分について,価格賠償の方法による共有物分割の判決がされた場合に支払われる賠償金の性質等
実務上,共同相続人全員の合意があれば金銭債権を遺産分割の対象とできるが,本判例は,そのような合意を問題とせず,金銭債権についても共同相続人に当然に分割帰属し,遺産分割の対象とはならないことを前提としない点に注目すべきである(平成25年重判151頁参照)。
なお,最高裁昭和54年5月22日判決(判例時報923号77頁)は,共同相続人全員の合意によって遺産分割前に遺産に属する不動産を第三者に売却した場合には,各共同相続人が売却代金債権を持分に応じて取得する旨判示している。
以上
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